美容師として独立するのによいタイミングはいつ?開業費用、収入相場も解説
美容師として働いている人の中には「将来、独立したい」「自分のお店を持ちたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし独立といっても「どれくらいスキルと経験を身につけたら独立できるのか」「資金はどれくらいかかるのか」といったことが分からないと、なかなか実行に移すことができません。
ここでは、美容師として独立するメリット、独立するために経験しておくべきこと、開業するために必要な計画・費用などを主に解説します。
また、独立開業した美容師の収入や店舗を持つ以外の独立方法についてもお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
美容師として独立するメリット2つ
独立すると、雇われで働いているときには得ることのできない、以下のようなメリットを得ることができます。
自由な働き方を実現できる
美容師として独立すると自分がオーナーとなるので、営業日や営業時間を自分で決めることができます。
もちろん、収支のバランスを取る必要はありますが、「大事な日に休みを取れない」「休みが少なすぎる」といった状況を改善できる可能性は高いでしょう。
「家族の予定や、自分の趣味の予定などを犠牲にして働いている」と感じている方は、独立することでその悩みを解決できるかもしれません。
また、「どのようなスタイルのサロンを経営するか」ということも自分で決めることができます。
自分が得意なカラーや、ヘアスタイリングを全面に押し出したお店作りをすることもできるため、自分の強みを最大限に活かした働き方をしていくことができるでしょう。
将来的な収入アップを目指せる
独立直後は資金繰りが苦しくなりますが、経営が軌道に乗り成功すれば、雇われ時代の収入を超えていくことも夢ではありません。
ただし、雇われ時代とは反対に月給の保証はなく、その月の売上によって自分の収入も増減します。
なので、収入や経費、人件費を自己管理して売上をあげられるよう、経営について勉強しておく必要があります。
独立した場合の収入について詳しくは後述する「独立開業した美容師の収入相場」をご覧ください。
独立するまでに身につけておくべきこと5つ
美容室オーナーとして独立するためには、実務経験やスキル、経営知識などを身につけておく必要があります。
ここでは、以下の5つについて詳しくお伝えします。
①実務経験
②経営の知識・スキル
③開業資金+貯金
④指名客の獲得
⑤独立してやっていく根拠ある自信
①実務経験
美容師として独立するのであれば、一般的には10年程度の実務経験が必要と言われます。
美容師免許を取り、アシスタントとして働き始めるのが20代だとすると、お客様を担当できるようになるまでに数年かかります。
さらに、マネージャー職など、マネジメントに関われるようになるまでに数年以上かかるでしょう。
その後、店長職も経験することができれば、店舗運営にも関わることができ、独立のための知識を身につけることができます。
美容室に雇われている間は、給与もある程度安定しているので、その間に開業のための貯金をしておくことも大切です。
②経営の知識・スキル
独立するのであれば、経営の知識・スキルは必要不可欠です。
カットやカラー、パーマなど、美容師としてのスキルが必要なのはもちろんですが、それだけでは店舗運営していくことはできません。
「①実務経験」でもお伝えしたように、キャリアステップを上がっていく中で知識を得るのはもちろん、既に独立している先輩などがいれば積極的に話を聞きに行くことをオススメします。
また、美容室経営の本を読んだり、研修やセミナー、コミュニティに参加してみたりするのもよいでしょう。
経営の知識は幅広く、「どこから取り組めばいいのかわからない」と悩む方も少なくありません。
そんなとき、独立している先輩の話やセミナーなどが、一歩を踏み出すきっかけとなるでしょう。
③開業資金+貯金
独立して美容室を開業するためには、一般的に1,000万円以上必要と言われています。
もちろん、銀行などで融資を受けて金額を補うとはいえ、全額融資はしてくれません。
条件を満たし、審査をクリアして初めて、3/4の融資を受けられます。
なので、独立して美容室を開業したければ、基本的に最低でも250万円は貯めておく必要があります。
また、経営がすぐに上手くいくことは少ないので、売り上げが低くてもしばらくの間続けていけるように自己資金を貯めておいた方が安心です。
独立開業のために必要な資金について詳しくは、後述する「独立開業するために必要な計画・費用、6項目」をご覧ください。
④指名客の獲得
独立した後、多くのオーナーが苦しむのが集客の問題です。
お金を貯めて店舗を持てたとしても、お客様が来なければお店を続けていけません。
なので、独立前から指名客との関係性をしっかりと作り、独立した後も来てくれるであろうお客様を増やしておくことが求められます。
また、もちろん新規集客も必要になります。
「お客様とどう繋がるか」「信頼関係をどう作っていくか」といったことについて、独立する前に十分考えておきましょう。
関連コラム:
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⑤独立してやっていく根拠ある自信
「独立してもやっていけるだろう」と思える根拠ある自信も大切です。
自分自身の勤務経験、スキル、経営知識、指名顧客など、実績もスキルも揃ったと思えるなら独立を考えてみてもよいでしょう。
高いスキルを持ち、たくさんの顧客がついている方であれば、独立しても続けていけるはずです。
独立開業するために必要な計画・費用、6項目
美容師が独立してやっていくために、絶対に考えなければならない計画や費用について6つお伝えします。
①事業計画
②物件(テナント)取得費用
③内装外装工事費用
④ 設備・備品購入費用
⑤広告宣伝費用
⑥運転資金
①事業計画
独立して美容室を経営していくためには、具体的な事業計画が必要です。
後述する店舗用物件(テナント)の取得費用や工事費、月々の賃貸料などの初期費用と、目標売り上げなどを具体的な数字に落とし込み、実現可能な事業計画を示しましょう。
この事業計画は、銀行や公庫からの融資を受けるためにも必要になります。
②物件(テナント)取得費用
物件(テナント)取得費用は、一般的には150万円ほどと言われています。
もちろん、こちらも場所や条件によって、金額の変動はあります。
この物件(テナント)取得費用は、以下のように細分化されます。
<物件(テナント)取得費用>
敷金:家賃3〜12ヶ月分
礼金:家賃1ヶ月分ほど
仲介手数料:家賃1ヶ月分ほど
家賃
これらのうち敷金・礼金・仲介手数料については、テナントを取得する際に払う必要があります。
ですので、これらは「開業するときだけ必要な資金」といえます。
ただし、家賃は一般的な賃貸物件と同じように、毎月かかる「開業するときから継続的に必要な資金」になります。
たとえば、家賃20万円の物件(テナント)を借りる場合は、以下のような金額が想定されます。
<家賃20万円の物件(テナント)取得費用>
敷金:60万円〜240万円
礼金:20万円
仲介手数料:20万円
家賃:20万円
総額:120万円〜300万円
一般に美容室開業をする場合、物件取得費用は「開業資金の15〜30%程度」を見積もっておくとよいでしょう。
③内装外装工事費用
美容室開業の費用の中で、もっともお金がかかるのが内装・外装の工事費用です。
一般的な美容室開業では、500万円前後かかるといわれています。
工事の具体的な内容は、天井や壁などの造作だけでなく、水回りやエアコン、電気やガスなど、美容室の営業に必須の工事にまで及びます。
美容室を理想の雰囲気にするために、また、水や電気を多く使用する美容室を問題なく営業するために、ここの資金は抑えすぎないほうがよいでしょう。
この費用も「どのような内装・外装にするか」などによって費用が変動しますので、いくつかの内外装工事業者に見積もりを取り、必要な費用の詳細を確認することをオススメします。
④ 設備・備品購入費用
美容室を開業するためには、大型美容器具や施術に使う備品を揃える必要があります。
この設備・備品購入費用は、200万円程度かかるといわれます。
美容室開業に必要とされる設備・備品の一覧は以下の通りです。
・スタイリングチェア
・鏡
・シャンプー台
・デジタルパーマなどの専用機材(メニューによっては不要)
・ドライヤー
・待合室用の椅子やテーブル
・シャンプー、トリートメント
・カラーなどの薬剤
・タオル
・クロス、ケープなどの小物類
・電話
・レジ
・洗濯機
など
これらも、あなたが開業しようとしている美容室のスタイルや規模によって必要な数が変わってくることでしょう。
一般的には200万円ほどかかるといわれていますが、
・最初はアウトレットなどの安価な設備を使用する
・備品は、最低限必要なものだけをまず揃える
といった工夫をすることで、可能な限り必要な費用を抑えていくことができます。
⑤広告宣伝費用
開業資金のうち、変動が大きいのが広告宣伝費用です。
開業してしばらくはリピーターのお客様もいないので、Webサイトやショップカード、ビラの作成や、美容室検索サイトへの広告掲載などをして、ある程度お金をかけて宣伝する必要があるでしょう。
しばらくしてリピーターのお客様が増えてくれば、口コミでの集客も増えてくることが考えられるので、広告宣伝費用を下げていくことができるかもしれません。
オープン前・オープン時の宣伝は、集客の点からいってとても大切です。
お客様に来てもらうためにも、ここの費用をあまり抑えすぎないようにしておきましょう。
⑥運転資金
継続して必要になる運転資金には、光熱費や薬剤費、スタッフのお給料などが含まれます。
そして、この費用は一般的には月に200万円前後かかるといわれます。
もちろんこちらも、美容室の規模や雇うスタッフの人数によって金額は変わってきます。
運転資金は、開業するときにだけかかる費用とは異なり、毎月、毎年かかってきます。
美容室の経営が軌道に乗るまでには6ヶ月〜1年かかるともいわれていますので、開業する際にはできれば1年分の運転資金を確保した状態で始められると安心です。
資金調達については、日本政策金融公庫などで融資を受ける方も多くいます。
「開業資金の調達」については、「美容室の開業資金はいくら必要?資金の内訳や調達方法、費用の抑え方」をご覧ください。
独立開業した美容師の収入
美容室のオーナーの収入は、一般的に売り上げの20%ほどと言われています。
80%は主に、人件費、材料費、テナント費などに使用されます。
<美容室の収支の概算>
テナント費:10%
人件費:35%
材料費:10%
販促費:10%
その他:15%
自分の収入:20%
自分の収入が20%なので、例えば1ヶ月の売り上げが100万円だった場合、美容室オーナーの月収は約20万円となります。
年収にすると約240万円です。
全国の理・美容師の平均的な月収は、賃金調査によると26万7500円となっているため、それを越えようと思えば、月に135万円以上の売り上げをあげる必要があります。(月の売上が135万円の場合、135万円の20%=27万円)
<全国の理・美容師の平均収入>
平均月収:26万7500円
平均年間賞与:9万1400円
平均年収:約330万1400円
2022、理容・美容師
参考:厚生労働省「2022年、賃金構造基本統計調査、一般_職種(小分類)DB」
もし人件費を抑えるために1人で経営する場合、その分収入は増えますが、1日に担当できるお客様の数も減ります。
店舗を構える立地や顧客層、お店のコンセプトも踏まえて、何人で運営するか、どのように集客していくかを事業計画に落とし込んでおきましょう。
1人で美容室を経営したいと考えている方は、こちらもご覧ください。
小さな美容室を成功させるために|集客や開業前後のポイントを解説
「自分の店舗を持つ」以外の独立方法2選
「独立はしたいけど、大きいお店を持ちたいわけじゃない」「こじんまりと、自分のしたい働き方を実現したい」という美容師の方は、店舗を持つ独立開業ではなく、フリーランスや訪問美容師が向いているかもしれません。
ここでは「フリーランス」「訪問美容師」といった自分のお店を持つ以外の独立方法について解説します。
フリーランス
フリーランス美容師と一口に言っても、その働き方にはいくつか種類があります。
ここでは「美容室オーナーとフリーランスの違い」を簡潔に説明した後、
「面貸し」
「シェアサロン」
「業務委託」
といったフリーランスの働き方3つについて説明します。
<美容室オーナーとフリーランスの違い>
美容室オーナーもフリーランスも「個人事業主」という点では同じです。
この2つの大きな違いは「自分の店舗を持つかどうか」にあります。
どこかの美容室に所属するのをやめて、自分のお店を立ち上げて経営していく場合、その働き方は「美容室オーナー(経営者)」と呼ばれます。
「美容室オーナー」の場合、その後は自分の美容室の経営を行っていき、報酬はお店の営業収入から得ることになります。
一方「フリーランス」は、自分のお店を持ちません。
特定の会社や美容室には所属せず、場所を借りて美容師の仕事をしたり、他の美容師が経営している美容室でフリーランスとして契約し、働くことで収入を得ていきます。
そのため報酬は、請負契約や歩合制の契約などで得ることになります。
フリーランスで働くことで、会社に所属して働くよりも勤務時間や休日などを自由に決められますが、契約が多い月・少ない月で収入に変動が発生するなどのデメリットもあります。
ここからは、フリーランス美容師の働き方の種類「面貸し」「シェアサロン」「業務委託」について説明します。
フリーランスの働き方①面貸し
美容室を経営しているオーナーと交渉、契約して、美容室の中の席を貸してもらって働くことを「面貸し」といいます。
貸してもらう分の利用料をオーナーに払います。
利用料の支払い方には一般的に以下の2種類があります。
「時間制」:借りている時間に応じて利用料を払う。
「歩合制」:借りている期間の売上から、契約で決められた%分の利用料を払う。
どちらが良いかは、集客がどれくらいできているかによって変わってきます。
まだあまり集客ができていない場合には「歩合制」の方が安くなるでしょうし、集客がしっかりできており、お客様が途切れないようであれば「時間制」の方が安上がりかもしれません。
この「面貸し」の場合、美容室前での集客やお客様への声かけは、美容室を貸してくれているオーナーの許可を得なければ難しいでしょう。
その分SNS、ブログ、YouTubeなど、インターネット上での集客に力を入れる必要があります。
ただし、オーナーとの関係性が良ければ、オーナーからお客様を紹介してもらえるケースもあります。
お客様向けのことだけでなく、同じ業界の先輩や同僚との関係を大事にしておきましょう。
フリーランスの働き方②シェアサロン
美容室としての設備や環境が整った場所を、月額払いや時間払いで貸し切って働くのが「シェアサロン」を利用した働き方です。
空いている席だけを借りる「面貸し」と異なり、「シェアサロン」では全ての席を貸し切ることができます。
新規でお店を立ち上げるとなると、お店の工事や道具の準備などをする必要がありますが、シェアサロンではその必要はありません。
そのため、いきなりお店を持つよりも低コストで始めることができます。
こういったシェアサロンでは、集客サポートを提供している場所もあります。
サポートを利用することで、フリーランス美容師の人脈や知識、ノウハウを獲得できる可能性が高いので「フリーランス美容師に必要な知識を増やしていきたい」という方は、シェアサロンのサポートを受けてみるとよいでしょう。
フリーランスの働き方③業務委託
会社や美容室に雇用されるのではなく、期間に定めを設けて業務の一部を任せてもらう働き方を「業務委託」と呼びます。
仕事を行う場所や必要な道具は、業務委託元の会社が準備してくれるので、通常の美容室と似た形で働くことができます。
また、雇用契約ではないので勤務時間などをある程度自分で決めることができます。
この「業務委託」の働き方で集客をする場合には、業務委託元のルールを守った集客をすることが大切です。
業務委託契約は、雇用契約と似た感覚で働いてしまいがちですが、雇用契約より業務内容をシビアに見られる契約です。
集客の際に、業務委託元の会社と結んだルールを破ってしまうと、次回以降の契約更新をしてもらえない、などの事態に陥ってしまう可能性があるので注意しておきましょう。
フリーランス美容師の集客方法7つ|成功するために押さえたいポイント
訪問美容師
訪問美容は、高齢や病気のために外出が難しい方がいるお宅や施設に訪問して、美容サービスを提供するお仕事です。
一般的なサロンワークと違い、依頼がある時間帯に訪問して施術をするので、シフトのように時間の融通が利きます。
また、訪問美容は「相手のいる場所に訪問して施術する」という性質上、店舗を持つ必要がありません。
なので、経費や設備費をかけずミニマムに独立したいという方には比較的向いている働き方であるといえるでしょう。
訪問美容では、一般的なサロンワークと同じく、ヘアカットやカラーなどを行います。
ただ、主なお客さんが高齢者や障がいのある方ということもあり、施術中には介護の知識も必要になります。
「美容師としてミニマムに独立したい」「高齢の方や障がいある方への施術に関心がある」という方は、訪問美容師としての経験を積んだ後、訪問美容師としての独立を検討してみるのもよいでしょう。
知っておきたい訪問美容師のメリット・デメリット| 収入の話や活動の始め方も解説
まとめ
ここまで、美容師として独立するメリットや独立するために経験しておくべきこと、開業するために必要な計画・費用などを主に解説してきました。
また、独立開業した美容師の収入や、フリーランス、訪問美容師など、店舗を持つ以外の独立方法についても合わせてお伝えしました。
美容師として独立することは、多くの美容師が持つ夢だと思います。
「どんな働き方をしたいのか」「自分の思いを叶えるために、どの独立手段が最適なのか」といったことを考えることで、あなたに最も合ったキャリアプランが見えてくることでしょう。
あなたが、独立を見据えたキャリアを考えていく際に、この記事の情報が参考になれば幸いです。
また、本文中で紹介した訪問美容について、当サイト「GOCHOKI」では、訪問美容に関心ある美容師に役立つ内容の記事を多数掲載しています。
訪問美容に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。