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訪問美容師の需要と現状│更にニーズの高まる訪問美容の業界で活躍するために

2021.02.18

高齢化がすすみ在宅医療のニーズがますます高まる日本では、今後まちがいなく「訪問美容師」の需要が高まっていくことが予想されます。ニーズがある一方で「需要と供給のミスマッチ」や「訪問美容師として働くための十分な情報や環境が確立されていない」など、訪問美容業界には数多くの課題があることもまた事実です。

今回は訪問美容の今後の需要と現状に触れながら、将来的に訪問美容師を目指したい方に向けて今からはじめたいアクションや活躍するために知っておきたい事柄についてまとめました。いつか訪問美容の業界に携わりたいという方は、ぜひご一読ください。

 

【この記事でわかる内容】

✔ 訪問美容が今後さらに需要が高まる理由
✔ 訪問美容が抱える課題とは?
✔ 訪問美容の客層・ターゲット
✔ 訪問美容師になるため、まず取り組みたいこと
✔ 訪問美容師を目指す方へのアドバイス

 

訪問美容師は今後さらに需要の高まる職業

結論からお伝えすると「訪問美容師」の需要は、今後まちがいなく伸びていくと予想されます。理由はいくつか考えられますが、主なものとして以下が挙げられます。

高齢者の増加
介護受給者の増加
在宅医療ニーズの増加
美容意識の高い高齢者の増加

 

高齢化にともなう介護受給者の増加

すでに認知されているように、日本の抱える高齢化問題は深刻です。

1950年には総人口の5%に満たなかった65歳以上の割合は、その後急激な上昇を続け2017年10月時点に27.7%にまで達しました。65歳以上の割合が全人口の21%以上を占める「超高齢社会」へ、すでに日本は突入しているのです。

日本政府の見通しでは今後も高齢化率は上昇し、2065年には全人口に占める65歳以上の割合は38.4%に到達。つまり国民の約2.6人に1人が65歳以上になると推計されています。

総人口が減少する中で65歳以上の者が増加することにより高齢化率は上昇を続け、2036年に33.3%で3人に1人となる。2042年以降は65歳以上人口が減少に転じても高齢化率は上昇を続け、2065年には38.4%に達して、国民の約2.6人に1人が65歳以上の者となる社会が到来すると推計されている。総人口に占める75歳以上人口の割合は、2065年には25.5%となり、約3.9人に1人が75歳以上の者となると推計されている。

引用元:内閣府「1.高齢化の現状と将来像」

高齢化が進むことで、介護受給者の割合も増加することとなります。外出がままならず介護施設や病院へ入院する高齢者の総数が増えることで、自ずと訪問美容師が求められる機会も増加すると予想されます。

 

在宅医療ニーズの増加

さらに近年、入院や施設に頼らない在宅医療のニーズが高まりつつあることも、訪問美容業界がさらに盛り上がると予想される要因の1つです。内閣府調査によると国民の60%以上が、入院や施設の入居ではなく自宅での療養を希望していることがわかりました。

引用元:「在宅医療・介護の推進について」在宅医療・介護推進プロジェクトチーム

自宅での療養・介護を望む高齢者が増えることで、個人宅へ訪問して施術を手掛ける訪問美容師のニーズはさらに高まっていくでしょう。

 

美容意識の高い高齢者の増加

さらに今後の傾向として「美容意識の高い高齢者の増加」が見込まれます。過去と比較して、現代は明らかに美容に関する情報発信が強化されており、美容感度の高い中年層~お年寄りの数も増えていると予想されます。

外出が困難になったのちも、今までと同様にプロ美容師による施術を受けたいと考える高齢者のニーズが高まることで、介護的な視点ではなく美容視点の強い訪問美容師の需要増加も期待されます。

 

訪問美容業界の課題とは?

ニーズこそあるものの2021年時点では課題も多い訪問美容師の業界。主な課題項目としては以下のものが考えられます。

✔ 利用者と訪問美容師のミスマッチ問題
✔ 業界自体の確立が不十分

 

最も大きな課題として「施術してほしい利用者」「訪問したい美容師」のマッチングがうまく成立していないことが挙げられます。

先述の通り要介護者や自宅療養者が増え続けている中、外出がままならず自宅や病院に髪を切りに来てほしい高齢者やそのご家族はたしかに存在しています。

しかし「訪問美容サービス」を受ける方法がわからなかったり、そもそも訪問美容師という職業自体を知らなかったりと、本来は潜在的なニーズが有るにも関わらずサービスが利用できない高齢者やご家族が多いのが現状です。


また美容師側にとっても利用者の開拓は大きな課題であり、集客に失敗し訪問美容を諦めてしまう施術者が多いのもまた事実です。

両者のミスマッチ問題を改善し、需要と供給が合致すれば訪問美容の業界はさらに盛り上がりを見せることでしょう。そのためにも美容師同士による情報共有や、サービスの認知に役立つメディアの確立などが今後は期待されます。

 

訪問美容の需要がある客層・ターゲットは?

訪問美容ときくと高齢のお客様を想像する方が多いかも知れませんが、訪問美容師がターゲットとする客層は高齢者にとどまりません。

✔ 外出困難な高齢者・要介護者
✔ 上記の介護・お世話をするご家族
出産・育児で外出できない女性
怪我や病気で外出困難な若い方
婚礼などで施術が必要な方


外出困難な高齢者や要介護者の方はもちろんですが、ご本人だけではなく自宅で介護や身辺の世話をしているご家族の方も施術を受けていただくことが可能です。自由な外出がままならないご家族や介護者の方は少なくないので、そういった方も気兼ねなく利用できる訪問サービスが確立できるとニーズはさらに高まるかも知れません。


また年齢が若い方でもお子さんの出産・育児で外出が難しいお母さんや、美容師に行くことで体に負担がかかる自宅療養者、怪我をして一時的な療養を余儀なくされている若者なども訪問美容の対象者となります。

 

訪問美容は誰でもサービスを受けられるわけではなく、地域ごとに要件が決められています。対象者の概要については以下の記事も参考にしてみてください。

→ 「訪問美容って私でも利用できるの?サービスの流れと料金を紹介」

 

訪問美容師になるため、まず取り組みたいこと

訪問美容 イメージ

訪問美容の需要増加と比例するように「将来的に訪問美容師へチャレンジしてみたい」というニーズ自体も年々高まりつつあります。ただし訪問美容師になるための具体的な方法やビジネスの取り組み方については情報も少なく、実際には手探り状態でスタートする美容師さんがほとんどです。

訪問美容師を志す皆さんにまず取り組んでほしい項目として、GOCHOKIからは以下のような方法を提案します。

 

① すでに訪問美容をやっている人に話を聞く
➁ 介護施設へ実際に足を運ぶ
③ 介護職員初任者研修を受けてみる

 

上記3つを提案する理由は大きく2つです。1つは「訪問美容師としての働き方や現状をリアルに知る」ため、もう1つは「実際に施術するお客様(高齢者や要介護者の方)の現場を体験を通して理解するため」です。

 

① すでに訪問美容をやっている人に話を聞く

先輩の訪問美容師に話を聞けるなら、まずは最優先で話を聞きにいきましょう。仕事への取り組み方や業務内容、実際の現場の話などを聞くことで、自身が今後訪問美容師として働いていくイメージを具体化させることができます。

またやりがいがある分、苦労も多い訪問美容師という職業だからこそ、実際に働いている方のリアルな声を聞くことが必要です。現場の難しさを知った上で、自分がどんな訪問美容師を目指したいのかというビジョンを徐々に明確化していきましょう。

この軸が定まっていないと、後に「なぜ自分は訪問美容師をやっているのだろう?」という壁にぶつかりやすくなってしまいます。

また実際に訪問美容師さんの話を聞くに越したことはありませんが、難しい場合は訪問美容のネット記事やインタビュー、書籍などから情報を得るのも有効な手段です。セミナーを聞きに行くのも良いでしょう。

まずは出来る範囲から「訪問美容師のリアルを知る」ことに注力してみてください。


➁ 介護施設へ実際に足を運ぶ

老人介護施設

先述したとおり、訪問美容師が相手とする顧客の大部分は高齢者や要介護の方となります。業務をスタートしてからギャップに戸惑うことのないよう、介護現場の現状を身を以て知っておくことは非常に重要です。

身近に介護職の人がいれば話を聞いてみるのもおすすめですし、可能であれば介護施設に足を運びボランティアやリクリエーションに参加させてもらうのも1つの手です。

高齢者や要介護者の方との触れ合いに慣れるという目的の他に、後に集客で生命線となりうる介護施設職員さんケアマネジャーさんとの信頼関係づくりのきっかけになる、というメリットもあります。

 

③ 介護職員初任者研修を受けてみる

介護現場を擬似的に体験するのであれば、介護職の研修を受けるのも良いでしょう。介護職の入門編である「介護職員初任者研修」は、介護で必要となる基礎知識や実技講習を学ぶことができるのでおすすめです。

130時間の講習では座学40時間、実技90時間の割合でベッドへの移動や車椅子の使い方、パジャマの着せ替え方などを実際に体験します。受講にはとくに資格なども必要ありません。

実際の現場で美容師が顧客を介助することはあまりありませんが、研修を修了していることでお客様ご本人やそのご家族に安心感を与えることができます。実際にクライアントとなる施設でも「初任者研修を受けています」という一言を添えるだけで、施設の方からの印象が異る場合もあるそう。

訪問美容の道に進みたいのであれば、講習の受講もぜひ検討してみてください。

 

訪問美容師を志す方に伝えたいアドバイス

これから訪問美容師を志す方に向けて、GOCHOKIスタッフが思う「事前に心に留めておいてほしい2つのアドバイス」についてお話します。

アドバイス① 最初から満点を目指さない

しっかりした仕組みが確立されていない業界だからこそ「これが必勝法」という明確な指針は存在しません。いま活躍できている先輩の訪問美容師も、みな最初は失敗と挑戦を繰り返しながら各々のスタイルを見つけていきました。

だからこそ今から挑戦する方は「はじめから大成功させよう」「初めての施術で100%の結果を出そう」などはあまり考えず、目の前の顧客1人1人にしっかり向き合あうことに集中してほしいと思います。

美容サロンとはまったく勝手の違う現場で「どうすれば心地よくサービスを受けてもらえるだろう」「何をすれば喜んでもらえるだろう」と試行錯誤をしているうちに、自ずと経験値や活躍できる場面も増えていくものです。道具もメニューも最初から数揃えず、必要に応じて都度増やしていけば大丈夫です。

訪問美容をスタートする際は「最初から完璧を目指さず、出来ることからやってみる」を意識して取り組んでみてください。

 

アドバイス➁ 集客は誰もが苦労する、諦めずに試行錯誤しよう

もう1点、訪問美容をはじめる方に知っておいてほしいのが「美容サロンとは集客方法がまったく違う」という事実です。

待っていればお客さんが自然と集まっていたサロンと違い、訪問美容では自ら病院や施設に営業をかけたり、SNSや紹介を通じてお客さんを開拓する必要があります。営業先では断られることも多く、心が折れてしまう美容師さんも少なくありません。

集客方法のギャップに戸惑わないよう、事前に現役美容師の方の話を聞いたり集客方法へのリサーチを進めておくのがおすすめです。

 

訪問美容師はさらに需要が加速する業界(まとめ)

今回は「訪問美容師の今後の需要と現状の課題」というテーマで、業界に関する展望やこれから訪問美容師として活躍するための知っておいてほしいアドバイスについて紹介しました。

訪問美容師は在宅医療や介護を受けながらも、美容サービスを受けたい方々の役に立てる素晴らしい仕事です。将来的に訪問美容師を志すならば、情報収集や講習を受けてみるなど出来ることから始めてみてくださいね。

GOCHOKIでは「訪問美容師」「利用者」それぞれに向けたコラムを毎月発信しています。ぜひそちらも見てみてくださいね。

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